家賃滞納への対処法は、滞納している期間(経過月数)によって優先すべきことや取るべき行動が変わってきます。
ここでは、滞納期間別に具体的な対応策を解説します。

まだ滞納前・支払いが遅れそうなとき
(滞納0ヶ月:期日までに支払えない見込みがある段階)
この段階が実は一番大事です。滞納を事前に防ぐ最後のチャンスと言えます。
早めに連絡と相談
支払期日前であっても、厳しければすぐ管理会社や大家さんに連絡しましょう。
「◯日の支払いが難しい可能性があります」と正直に伝えます。

一部でも支払い準備
全額は無理でも、例えば家賃7万円のところ5万円なら用意できる場合、期日までにその5万円だけでも支払うか、あるいは相談時に「今○万円はお支払いできます」と申し出ると良いです。

公的支援の検討
収入減少や失業などが理由なら、市区町村の社会福祉協議会にある緊急小口資金や住居確保給付金の相談をしましょう。
緊急小口資金は10万円程度を無利子で貸付する制度で、コロナ禍で利用者が増えました。
住居確保給付金は一定要件で家賃を自治体が肩代わりしてくれる制度です。

身内・知人からの一時借入
信用情報に傷も付かない段階ですので、頼れる家族や友人がいれば頭を下げてお金を借りることも検討しましょう。
滞納するくらいなら借金してでも払った方が被害は小さいです。

ココがポイント
とにかく「無断で期日を過ぎない」ことです。
期限までに1円も支払わず何の連絡もしないと、それだけで印象が悪化します。
連絡さえあれば、多少遅れても待ってもらえたり分割を提案されたりする可能性があります。
事前対応で滞納扱いにならずに済む場合もあるので、この段階で手を打てることは全て試してください。
滞納初期(滞納1ヶ月以内)
(滞納発生~1ヶ月未満)
支払期限を過ぎてしまったら、まずは一刻も早く支払うことが最優先です。

即支払い・即連絡
もしお金を用意できるなら、すぐにでも支払ってください。
その上で管理会社に「遅れてすみません、本日○月分をお支払いしました」と連絡します。
これで一件落着です。

期日から1週間以上遅れている場合
まだ用意できていなければ、例えば給料日などメドが立つ日を伝えて待ってもらいましょう。
「〇日には支払えます」と明確に約束し、そしてその日までに必ず払います。

管理会社への事情説明
既に督促電話が来ているでしょうから、その際に事情を話して謝罪します。
「今月中には入金いたします」と伝えれば、普通は承知してくれます。

二次的滞納を避ける
1ヶ月滞納すると次の家賃の支払日がまたやってきます。
この段階で怖いのは滞納が連鎖することです。
例えば3月分を滞納→4月になり4月分も払えない、となると滞納2ヶ月に突入します。
そうならないよう、4月分は何とか支払いつつ、3月分滞納を解消するのが理想です。
苦しいでしょうが、新たな滞納を増やさないよう死守してください。

ココがポイント
滞納1回目・期間1ヶ月未満であれば、まだ「信頼関係が破綻した」とはみなされません。
むしろ普通に暮らしていれば、「うっかりミスかな?」くらいの扱いです。
契約解除や強制退去になることはまずありません。
ですから、迅速に対処すれば大事にならずに済む段階です。
絶対にこのチャンスを逃さず、1ヶ月分の滞納はできるだけ早く埋めましょう。
滞納中期(滞納2~3ヶ月)
(滞納が2ヶ月目に入った段階)
滞納が2ヶ月に及ぶと、管理会社・大家さんからの心象はかなり悪くなります。
内容証明による請求や契約解除通知が届き始めるのもこの頃です。

ここが踏ん張りどころです。
最低でも1ヶ月分を支払う
2ヶ月滞納中でお金が足りない場合、せめて半分(1ヶ月分)でも支払って滞納期間を1ヶ月相当に戻す努力をしましょう。
例えば2ヶ月分計14万円滞納しているなら、7万円だけでも入金します。
これで滞納月数は実質1ヶ月分に軽減されます。
裁判所でも「滞納1ヶ月なら契約解除はまだ早計」という判断がされやすいので、状況を改善できます。

分割払いの提案
2ヶ月分ともなると、一括完済が難しい人も多いでしょう。
この場合、分割払いを正式に提案します。
例えば「現在○万円滞納しています。このうち○万円は今すぐ支払い、残り○万円を今後3ヶ月で分割したいです」と申し出ます。
契約解除通知が来ていても、払う意思を示せば大家さんも迷うかもしれません。

退去も選択肢に入れる
どうしても支払の目処が立たない場合、自主的に退去する決断も必要かもしれません。
例えば仕事を失って全く収入がない場合、早く安い実家等に戻って出費を減らし、滞納分を返済する方が建設的です。
退去すると伝えれば、裁判を待たずに貸主も合意してくれるかもしれません。
その際「滞納分は分割で支払いますので猶予ください」とお願いしましょう。

法的措置への備え
内容証明郵便や支払督促(簡易裁判所からの書類)が届いたら、無視せず対応します。
内容証明には指定期限があるので、それまでに払えるなら払い、無理なら管理会社に電話して協議を求めます。
支払督促は2週間以内に異議申立てしないと確定してしまいますので、異議があれば出します。
いずれにせよ、裁判所からの通知を放置しないことです。

ココがポイント
滞納2~3ヶ月はラストチャンス期間とも言えます。
ここで動けばギリギリセーフ、ここを逃すとアウト(強制退去コース)となることが多いです。
できる限りの資金繰りをし、大家さんとの話し合いに持ち込み、退去を避けるための努力をしましょう。
逆に、この段階で何もせず3ヶ月目に突入すると、貸主側の退去への意思が固まってしまうため取り返しが難しくなります。
滞納長期(滞納3ヶ月以上)
(滞納が3ヶ月を超えた段階)
残念ながら、滞納3ヶ月となると一般的には契約解除と退去要求が現実味を帯びてきます。
裁判手続きも進行するでしょう。

可能な限り支払う
例えば3ヶ月分滞納で計21万円の場合、手元に10万円でも用意できるならすぐ支払ってください。
全部払えなくても、「誠意払い」として一部でも払うことは大事です。

裁判で和解を模索
明け渡し訴訟を起こされたら、出廷して裁判官の前で事情を説明します。
解雇され収入が減った等の同情事情や、○月から就職する見込みがある等の今後の展望を話し、退去猶予や分割弁済の和解を提案します。
相手が合意すれば、「○月末までに明け渡し、滞納○万円は分割で支払う」等の和解が成立するかもしれません。

執行猶予の申立て
判決で明け渡しが命じられても、民事執行法で最長6ヶ月の明け渡し猶予が認められる場合があります。
病気や子どもの学期終了まで等、特別の事情があれば判決時に執行猶予を求めてみましょう。

引越しと生活再建
強制退去が避けられない場合でも、自ら引越し業者を手配して自主退去する方が被害は少ないです。
執行官に強制的にやられると荷物の扱いも雑になり費用も嵩みます。
期限までに自力退去し、滞納分は負債として残りますが、分割で払っていくか、債務整理(任意整理や自己破産も選択肢)を検討します。

ココがポイント
滞納3ヶ月以上になると、現実的には住まいを維持するのはかなり難しくなります。
しかし大事なのは、その後の人生をどう立て直すかです。
無理に居座って強制退去されるより、自ら区切りをつけて新たなスタートを切る方が、結果的に良い場合もあります。
悔しいでしょうが、一旦リセットする決断も視野に入れてください。
また、滞納が長期化してしまった方は、今後の防止策として収入と支出のバランスを根本的に見直す必要があります。
家賃が収入に対して高すぎたのかもしれません。
引越し後は無理のない家賃の物件を選び、二度と同じ苦境に陥らないよう計画的な家計管理を心がけましょう。