賃貸物件において、家賃管理や督促の実務を行うのは多くの場合不動産管理会社です。
物件によっては大家さん自身が行うこともあります。
こちらでは、管理会社が入居者の家賃滞納に対して具体的にどのような対応を取るのか、その一般的なプロセスや方針を解説します。

管理会社は滞納発生後すぐ動く
管理会社にとって家賃滞納は放置できない重要事案です。
なぜならオーナー(貸主)から家賃回収を委託されている以上、滞納を見逃せばオーナーに損害が及び、管理会社の信頼にも関わるからです。
そのため、管理会社は入居者が家賃を滞納すると分かった段階で非常に迅速に対応を開始します。

この初期対応としては電話連絡が主ですが、電話が繋がらなければメールやSMS、緊急連絡先への連絡など別手段も試みます。
管理会社の担当者は、「単なる入金忘れかもしれないから早めに確認しよう」というスタンスでまず動きます。
管理会社によって細かな対応は異なりますが、多くは社内マニュアルで滞納○日目に何をするか決められているものです。
例えば「滞納1週間までは電話で督促。10日経過で書面督促。1ヶ月経過で保証人や保証会社へ連絡」といった具合です。

管理会社の督促手順と心情
管理会社担当者も人間ですから、最初は柔らかく丁寧な督促から始めます。
しかし、借主から反応がなかったり約束が守られなかったりすると、徐々に文面や口調も厳しくなっていきます。
電話での督促(~滞納1週間程度)
「お忙しいところ失礼します。〇月分の家賃がまだ入金確認できておりません。ご事情いかがでしょうか?」といった丁寧なヒアリングから入るでしょう。
借主が「すみません、すぐ払います」と答えれば、「では至急お振込みお願いします。何日までにご対応いただけますか?」と期限を確認します。

書面での督促(滞納1~2週間)
電話で解決しない場合、管理会社は督促状を発送します。
書面では「〇年〇月分の家賃〇〇円が未納となっております。至急お支払いください。」といった事務的な文面になります。

保証人・保証会社への連絡(滞納2~4週間)
借主からの返答がない、または約束が守られない場合、管理会社は連帯保証人や保証会社へ状況を報告し、対応を依頼します。
保証会社がいる場合は、管理会社は自社での回収を打ち切り、保証会社にバトンタッチすることもあります。
保証会社が立替払いすれば、管理会社としてはひとまずオーナーへの責任は果たせますので、その後は保証会社主導になります。

現地訪問・調査(滞納1~2ヶ月)
借主とまったく連絡が取れない場合、管理会社は現地を訪問することがあります。
ポストに郵便物が溜まっていないか、電気メーターの動きはあるか等をチェックし、ひょっとして夜逃げしていないか、あるいは室内で倒れていないかなど状況確認をします。
必要に応じて近隣住民に最近の様子を聞いたりもします。

管理会社としては、「滞納=イコールすぐ追い出す」ではなく、できれば話し合いで解決したいというのが本音です。
なぜなら、退去となれば新しい入居者募集や空室期間の発生などオーナーに不利益が出ますし、管理会社もその対応に労力がかかります。
それよりも入居者に何とか支払ってもらい、そのまま住み続けてもらう方が双方にとって良いのです。

しかし、それを借主が裏切る形になる(約束を破る、連絡を無視する等)と、管理会社も毅然とした対応に切り替えます。
「これ以上待ってもダメだ、この人には強い手段を取るしかない」と判断するラインがだいたい滞納2ヶ月目くらいです。

管理会社が強硬措置を取るケース
通常、鍵の交換や荷物の差し押さえなど、裁判なしに借主の占有を侵害する行為は違法です。
しかし、実際には一部の管理会社・大家が強硬措置に出るケースも稀に存在します。
典型的なのが無断での鍵交換です。
ある滞納者の体験談では、「入院で不在にしていたところ、退院して帰宅すると部屋をロックされ入れない状態だった。何の通達もなく鍵を替えられ、家賃を払ってもらわないと開けられないと言われた」という事例がありました。
これは管理会社が貸主の意向で鍵を交換し、滞納者を締め出したものと思われます。

なぜこんなことが起きるかと言うと、借主が長期間行方不明の場合、大家側も業を煮やし「もう出て行ったものとみなす」と独断してしまう場合があるのです。
特に借主が夜逃げ同然でいなくなったと大家が感じた場合、裁判を待たずに荷物を処分し部屋を明け渡そうとすることがあります。
もちろん正当な手続きではありませんが、現実問題として泣き寝入りになることもあります。
管理会社としては法律遵守が基本ですので、多くの場合こんな乱暴なことはしません。
ですが、オーナーの意向が強く、「早く追い出せ」と迫られた管理会社が苦し紛れに違法行為をしてしまうリスクはゼロとは言えません。
こうした行き過ぎた対応に出られないためにも、借主として連絡を絶やさず「居住の意思」を示し続けることが重要です。
連絡さえ取れていれば、管理会社も勝手な判断はできません(裁判手続きを踏むしかなくなる)。

管理会社との向き合い方
家賃滞納時、管理会社は「敵」ではなく問題解決のパートナーと考えるべきです。
管理会社の担当者も、人によっては親身になって相談に乗ってくれることがあります。
「いつまでにいくら用意できますか?」「分割ならこのくらいで…」と一緒に考えてくれる場合もあります。
実際、「管理会社に事情を話したら、一緒にオーナーに掛け合ってくれて分割案を承諾してもらえた」という話もあります。
そのためには、こちらも誠意を持って接することです。

滞納についても素直に謝罪し、謝意を持って相談しましょう。
「ご迷惑おかけしてすみません。なんとか払いたいのですが…」と打ち明ければ、多くの管理会社スタッフは頭ごなしに怒鳴りつけたりしません。
むしろ「大変でしたね、ではこうしましょう」と解決策を探ってくれるでしょう。
逆に、管理会社を舐めた態度でいると痛い目を見ます。
中には「管理会社なんて所詮下請けだから強く出ても大丈夫」と誤解して横柄な態度を取る人がいますが、それは逆効果です。

本気で相手にされなくなれば、粛々と退去への手続きを進めるだけです。
管理会社の本音
管理会社の担当者の本音を推測すると、「できれば滞納せず払ってほしいけど、滞納してしまったら早く解決してほしい」ということに尽きます。
長引く滞納は管理会社にとっても負担です。
電話や書面を何度も送る手間、オーナーへの報告、場合によっては裁判手続きの助言や立ち会いなど、余計な仕事が増えます。

もしあなたが滞納してしまった場合、管理会社の担当者に対しては、「ご面倒をおかけして申し訳ありません。必ず支払いますので少しお時間をください」といった一報を早めに入れましょう。
それだけでも担当者は「了解しました。では経過を見守ります」となるかもしれません。
全く連絡なしでいるのが一番困るのです。
管理会社は貸主と借主の間を取り持つ存在なので、双方にとってベストな解決を図ろうとします。
借主が頑張って滞納解消すれば貸主も喜び、管理会社も評価されます。
ですから、管理会社に協力してもらえる部分は大いに頼るべきです。

まとめ:管理会社との協調がカギ
家賃滞納時の管理会社の対応は、基本的に段階を追った督促と調整ですが、その根底にあるのは「早期解決したい」という思いです。
借主としては、管理会社の動きを理解しつつ、自分からもコミュニケーションを図り協調することが肝要です。
- 管理会社からの連絡にはすぐ応答する。
- こちらからも状況報告や相談をする。
- 無理難題でない範囲であれば管理会社の提案に従う。
- 管理会社を味方につけるくらいの意識で接する。
